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|インド 解き放たれた賢い象

サイズ A5平ソフトカバー
販売価格 3,486円(税込)
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インド人による初めての本格的なインド紹介の本と評判の『インディア・アンバウンド』の邦訳。ノーベル経済学賞受賞者アマルティア・センも「自叙伝、経済分析、社会調査、政治点検およびビジネス展望が、ない交ぜになってインド理解へと導く素晴らしい本」と絶賛する。

本書の構成
第一部 希望の春(1942〜1965)
 第一章 英語で怒鳴り、サンスクリット語で詠唱する
 第二章 バザールの匂い
 第三章 行き先のない列車
 第四章 あのとき盲目、そして今は?
 第五章 もしかつて豊かだったのなら、なぜ今は貧しいのか
 第六章 新聞配達の道
 第七章 資本主義で富み、社会主義で貧する
第二部 失われた世代(1966〜1991)
 第八章 バザールの力
 第九章 《レルマロホ》と《台中在来1号》
 第十章 カースト
 第十一章 ゼロを掛ける
 第十二章 マルワリ商人
 第十三章 カブタルカーナの夢
 第十四章 許認可の憂うつ
第三部 夢の復活(1991〜1999)
 第十五章 一九九一年「黄金の夏」
 第十六章 百万人の改革者たち
 第十七章 ニューマネー
 第十八章 オールドマネー
 第十九章 中流階級の着実な台頭
 第二十章 近代と西洋
 第二十一章 まず民主主義、それから資本主義
 第二十二章 知識は富なり
 第二十三章 新しい国家

本書引用
──私は自分の人生の歩みを、国家の歩みの節目を物差しにして計ることができる。
私が生まれたとき私たちの国家は、英国をインドから追い出すために戦っていた。
学校に上がるころにはインドは独立していた。
まもなく新たな楽園に入るのだと思った。

──私の中で二つの記憶が競い合っている。
ソフトウエアの会社を立ち上げ、ドーティから携帯電話をぶら下げてマドラス空港で静かに私の側に座っていた二人の僧侶の記憶と、
昼間は食堂で働き夜はコンピューターを学んで、
「ビルゲイツ」になると夢見る十四歳のラジュの記憶が。

独立からIT時代にいたるインドの社会・経済革命
・自叙伝、経済分析、社会調査、政治点検および経営展望がないまぜになってインド理解へと導く素晴らしい本だ。
   ──ノーベル経済学賞受賞者/アマルティア・セン

・何かとてつもない事がインドで起こりつつあり、ダースはその変化の脈搏にぴたりと指を当てた。
   ──ニュヨーク・タイムス紙

・インドの曲がりくねった経済の軌道を示す、最も面白くて読み応えがあり、且つ洞察に富んだ一冊である。
   ──ビジネス・ウィーク紙

・読者にとってはこの本は歓迎すべき驚きである。インドで起こっている根本的な変化に疎い読者の目を開かせてくれる。
   ──ワシントン・ポスト紙

【インド 解き放たれた賢い象・新聞書評】

☆自伝的要素濃い経済史(北海道新聞)
著者は青春期をアメリカで過ごし、ハーバードに学んだ。しかしいわゆる海外で成功したインド人ではなく、卒業とともに帰国し米国企業の現地法人に就職。地方都市の商人とバザールの流儀で交渉し、国の規制に縛られ、許認可のために完了相手の不毛な時間を浪費する。経済開放以前のインドビジネスと政財界を随まで経験し、文字通り叩き上げてトップに登りつめた。現在はベンチャー投資家を兼ね作家活動する、その自伝的要素の濃い現代インド論である。
 著者はインド独立前年の生まれ。個人の成長が新生インドの歩みと完全に重なる。ビジネスマンとしての成長過程もそのまま現代インド実録経済史である。アメリカ仕込みの教養と経済、ビジネス感覚、インドの現場体験を併せ持った記述や分析には納得させられ、読みごたえがある。地方都市の家系出身の都市中間層という立ち位置は今のインドのリーダーたちの一つの典型で、その点から著者の価値観や社会観には注目しておく必要があるだろう。
 ただ原著は二〇〇〇年の出版。すでにIT分野では知られていたが、RICs(新興四カ国)という用語も登場していない。この十年にインドは著者の想像を超えて成長した。一方で予想しなかった事態も生じた。富裕層は増えたが貧困は解消せず、格差は拡大。宗教ナショナリズムやテロリズムなど難問を抱えたままであることもわれわれは知っている。発展がすべてを解決するような本書の結びを(日本版への追補的文章は加えられているが)今の時点で読むと、仕方がないことだが消化不良を感じてしまう。
 もう一点。インド人への関心の高まりから関連図書の翻訳が増えている。
が、本書のようにインドの知識人レベルが対象の本を日本の一般読者に紹介するのは、訳語の表記や馴染みのない事項の解説など難しいことだと思った。

北海道新聞 2009年(平成21年)5月3日(日曜日)
 評・関口 真理
(亜細亜大非常勤講師・南アジア近現代史)


☆世界史的な転換、内部からの報告(日本経済新聞)
インドが一九九〇年代以降、グローバル化の流れに乗るようにして急速な経済成長を遂げたこと、その成長を指導したのが知識産業としてのIT産業であることは今ではよく知られている。しかし逆に、インドがなぜ九〇年代に入るまで離陸(テークオフ)し得なかったのか、その歴史的理由はそれほど理解されていない。 本書はインド独立後の経済体制が、その内向的・統制的体質のゆえに、長らくインド経済、取り分け企業の潜在的な能力を窒息させてきたことを、経営者として野水からの経験を縦横に交えつつ、余すところなく描いている。
 著者はインドの生みの親、ネルーがこの国に民主主義を定着させたことを高く評価しながらも、市場経済と起業家に対する不信感ゆえに、国家と官僚制度に過剰な期待をして、四十年近くもインド経済を停滞させたことを容赦なく批判する。
 しかし、九〇年代初頭に始まった経済自由化政策が、インド経済の潜在的な能力を解き放った。新しく登場した起業家や新・中流階級の将来に対して、著者は楽観的である。半世紀以上の民主主義の実践によって、インド社会の底辺にいる下位カーストがその地位を引き上げつつある事態も積極的に評価している。
 もちろん、著者はインド人がかつて「産業革命」に失敗したことも、インド社会が今なお様々な弱点を持つことも謙虚に認める。しかし、世界が「工業経済」から「知識経済」に移行しつつある中で、今やインドが顕著な競争優位性を持ちつつあると指摘。「インド人の大部分は今世紀初めの二十五年で中流階級になるはずだ」とまで断言している。
 だが、本書を読みとおすならば、これは決して誇大な言明ではないと感じさせられる。なぜならば、本書が経営者としての経験のみならず、一級の知性を併せ持つ著者による、インド経済についての均衡の取れたインサイダーリポートとなっているからである。私たち日本人は、本書から現在インドで生起する事態が世界史的な意義を有する大転換である、というメッセージを受け取るべきであろう。

日本経済新聞 2009年(平成21年)5月17日(日曜日)
大阪市立大学教授 脇村 孝平


☆戸惑いと成長 奥深さを備え(朝日新聞)
 世界に存在感を増しつつある新興大国インド。だが、私たち日本人は、どれだけインドのことを知っているだろうか。
 古代文明、 仏教の発祥地、巨大な人口、ガンジー、混沌と貧困、階級社会、IT技術‥‥‥多様な側面が、統合されることなく思い浮かぶ。そんなインドがグローバル化のなかで変わり始めた。本書は60年代の日本に第一の変革を求め、70年代の韓国・台湾、90年代の中国に続くインドを第4の変革ととらえる。科学技術・経済大国に成長した日本との対比も随所にちりばめた。
 著者はニューデリー在住の著述家。経営コンサルタント。独立から近年の経済発展まで、刻々と変化するインドの姿を、自らの体験を通してつぶさに観察し、分析した。長い伝統や複雑な因習と、グローバル化にともなう社会構造の転換や新たな価値観の台頭との間でインド社会が戸惑い、もがく一方で、急激な変化をも我がものとする社会の奥深さ、人々のしたたかさも浮かび上がってくる。著者は、そんな多様な「巨象」の行方に希望の光を見いだす。

朝日新聞 2009年5月22日 夕刊


☆変革の内実と教訓示す(西日本新聞)
 本書は著者の自伝として自信の経験を綴り交ぜつつ、独立から現在に至るインドの変容を描いている。国内外からの広い視点でインドの社会経済や政治などを詳細にとらえることができているのは、著者がハーバード大学を卒業したのち経営者や著述家として活躍することによるものだろう。インドに関する本は外国人の手によるものが多かったが、本書はインド人自身の手によるものである。
 本書ではインドの国際的な台頭の要因を1991年から始まった経済改革と、IT革命の進行による知識経済かへの対応に求めている。独立の指導者ネルーにより民主主義がインドに導入されたと同時に、経済においては社会主義的で非効率な「官許統治」が種々の無駄な規制を生み出す帰院となった。市場経済を理解しない官僚が長期にわたり企業を抑圧したことを、筆者は自らが経営者として経験した「許認可の憂うつ」を元に痛烈に批判している。
 経済改革では市場主義経済へと脱却が図られ、グローバルな自由競争にインドが参入したまさにその時期に世界で進行していたIT革命の潮流にインドは乗った。経済改革を推し進め、かつて産業革命に失敗したインドが知識社会で競争優位を持つことに至ったことが、本書タイトルのインドが「解き放たれた」ことの意味するところである。筆者はインドと中国の世界経済における台頭を西洋のルネッサンスや産業革命に匹敵する重大な出来事とし、世界に影響を及ぼすインドの変革について、その内実に見える教訓を含めて本書は日本人に伝えてくれる。
 著者によるインドの将来に対する予想は、全体を通して楽観的で自信にあふれたものだ。今世紀の初めの25年でインド人の大部分は中流階級になると予測し、さらに今世紀の前半にインドの経済問題が解決され貧困が消滅する可能性さえ示している。2008年秋以降の経済危機については本書には含まれないのだが、楽観的な著者の意見を聞いてみたいところである。

九州大学比較社会文化研助教  大杉 卓三
西日本新聞 2009年(平成21年)6月7日 日曜日
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