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|BOPを変革する情報通信技術 バングラデシュの挑戦


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福岡 貧困層救済の研究組織設立に向けて覚書を結んだ(左から)NTTの篠原弘道取締役、グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌス氏、九州大学の安浦寛人副学長 九州大学は27日、貧困層救済のため独自の融資制度を築きノーベル平和賞を受けたグラミン銀行グループ(バングラデシュ)と、提携研究機関の設立に向けた覚書を締結した。

 研究機関は、国際産学組織「グラミン・クリエイティブ・ラボ(GCL)@九州大学」と「グラミン・テクノロジー・ラボ(GTL)」。GCLは利益を社会問題の解決に使う「ソーシャル・ビジネス」に関する研究や教育、普及などを行う。来年度中に活動を始める。GCLは数カ国の大学に設置されており、国内は立教大学に続き2例目。

 GTLは、発展途上国の実情に即した技術や製品の開発が狙い。同グループが技術開発で企業や大学と連携するのは世界初で、発展途上国のニーズや実験の場などを提供する。九大、同グループ、NTTの3者で具体的な検討に入り、本年度中に参加企業などを募集、年度末までに設立のための契約を結ぶ予定。九大は2007年に同グループの1社と学術交流協定を結び、同国向けのICカード式電子通帳の研究を進めている。

 福岡市で行われた締結式には、同行総裁でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏が出席。「世界トップの日本の技術が、発展途上国の生活に変化をもたらすことを期待したい。日本の企業もそのために取り組んでほしい」と話した。

■「日本の技術で母国発展を」 電子通帳発案者のアハメッド九大准教授

 九州大学がバングラデシュで普及を目指すICカード式電子通帳の実証試験が、11月から首都ダッカで始まる。同国のグラミン銀行グループとの提携事業。発案者は、同大学で情報技術の研究に携わるバングラデシュ人のアシル・アハメッドさん(39)。「日本で学んだ成果を生かし母国を豊かにしたい」と福岡、ダッカを飛び回っている。

 アハメッドさんは1988年、コンピューター技術を学ぶため来日。大分高専や東北大学、通信会社などを経て、2年前から九大で開発途上国の社会情報基盤構築の研究開発に取り組み、現在はシステム情報科学研究院特任准教授を務める。

 電子通帳の事業は、同銀行が貧困層の自立支援のため無担保・低利で行う少額融資制度と連携。入出金管理に九大独自のICカードを利用し、効率化や不正防止に役立てる。同銀行傘下のグラミン・コミュニケーションズの一員でもあるアハメッドさんが、九大伊都キャンパス(福岡市)で実用化された電子マネー機能付きの学生証をヒントに考えた。同銀行総裁のムハマド・ユヌス氏も、取り組みを高く評価しているという。

 母国は最貧国の一つに数えられる。学生時代から支援に熱心なアハメッドさんは、自分の奨学金の一部を幼少期を過ごしたエクラシュプール村に送り、子どもたちの教育を支えた。情報格差を埋めようと奨学金を元手に日本人の知人と基金を設け、同村の小学校など16カ所で新聞を購読させた。その輪が約250カ所に広がり、半数が自費購入する現状を「人々が情報に関心を持つようになった」と喜ぶ。

 20日にはアハメッドさんらの編著で、九大の取り組みを紹介する「BOPを変革する情報通信技術−バングラデシュの挑戦」(集広舎、1890円)を出版した。「情報技術は途上国の暮らしを豊かにする」。そう確信し、アハメッドさんは母国での実証試験に臨む。

=2009/09/28付 西日本新聞朝刊=


アシル・アハメッド/大杉卓三編著/グラミン銀行 総裁ムハマド・ユヌス序文 1890円
この本によって、学生たちが社会問題の解決に向かい、研究者たちが新たな試みの種を発見し、高度な技術を持つ日本の企業がソーシャル・ビジネスへの関与を拡大していくことを希望する。私たちが共に働くことができるなら、「貧困を博物館に」という構想は現実味を帯びてくるだろう。(本書序文より)

電気が通じていない農村で携帯電話を使う村人、電話線が整備されていない町で運営されるインターネットカフェ。開発途上国において、情報通信技術(ICT)が農村部でも人々の身近に存在する風景は、ありふれたものになろうとしている。

本書の舞台であるバングラデシュをはじめとする開発途上国ではBOP(Base of the Pyramid:所得ピラミッドの底辺層)と呼ばれる貧困層が人口の多くの割合を占める。世界で40億人以上といわれるBOPを巨大なマーケットとして再定義し、持続的なビジネスを通して貧困削減に取り組む戦略が注目を集めている。BOPマーケットでは、社会的利益を最優先させ、BOPの人々が自ら取り組む「ソーシャル・ビジネス」が重要であり、そこにICTは不可欠なツールとなっている。ICTを活用することで人々は適切な情報を入手し、またコミュニケーションは人々の連帯を実現する。その結果、自らの能力に自信を持ち、単なる巨大マーケットの消費者ではなく新たな富を創造する生産者ともなりうる。本書は九州大学とグラミン・コミュニケーションズの共同研究の成果に基づき、バングラデシュにおいてICTが導く社会経済の変革について具体的事例を綴ることで、そこに暮らすBOPの人々の姿を明らかにする。

ノーベル平和賞受賞者 福岡アジア文化賞受賞者のグラミン銀行総裁 ムハマド・ユヌス氏が、特別に本書に寄せた序文には、

「情報通信技術(ICT)は、貧困削減など多くの社会的な問題を解決する上で重要な役割を持つ。グラミンのビレッジ・フォン・レディと呼ばれる女性たちは、ICTが貧しさから人々を引きあげ、彼らを取り巻く世界に貢献する本物のビジネスチャンスを作り出すことを証明した。・・・今では2,000を超えるテレセンターがグラミンなどの組織によって運営され、農村ではICTが日常生活の一部になっている。バングラデシュではすべての地域に携帯電話のネットワークが張り巡らされており、加入者数は 4千800万人に達している。この携帯電話というインフラストラクチャーを使って開始された有料のアドバイスサービスは、僻地に住む患者と医師、農民と農業専門家、売り手と買い手の間にあった距離と時間を縮めた。携帯電話を使えば、いつでも、どこでも、医師や農業専門家のアドバイスを受けることができる。・・・本書には、九州大学の研究グループがバングラデシュの現地調査で得た経験が収められている。この本によって、学生たちが社会問題の解決に向かい、研究者たちが新たな試みの種を発見し、高度な技術を持つ日本の企業がソーシャル・ビジネスへの関与を拡大していくことを希望する。私たちが共に働くことができるなら、『貧困を博物館に』という構想は現実味を帯びてくるだろう。」と本書の意義を述べている。
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